津軽十三湖しじみ亭奈良屋
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北津軽の海と下前漁港
[十三湖の風保存版](当店発行の情報誌『十三湖の風 第2号』より)

▲権現崎に日本海の荒波が押し寄せる。


▲シケに寄り添う下前漁港のイカ釣り漁船




▲ストーブ列車に設置されたダルマストーブ


▲津軽鉄道「ストーブ列車」


▲十三湖に沈む夕日
シケに寄り添うイカ釣り漁船

 津軽半島の北部の日本海側に小泊漁港がある。中里町から車で約30分のところだ。その手前には日本海に突き出すように切り立った権現崎がありその根元には下前漁港がある。
 10月初旬の早朝、その下前漁港を訪れて見た。安東水軍やその滅亡が謎とされている中世の貿易都市十三湊がある市浦村を過ぎて日本海に出ると目の前には鉛色の空と荒れ狂った海が現れてきた。下前漁港のイカの水揚げを見ようと出かけてきたのだがこのシケでは漁は行われていないだろう。
 海沿いに15分程行くと左右への分かれ道に出た。右折すると小泊へ通じている。左の道を下前漁港、権現崎へと向う。海岸から遥かに高い道を今度はまっしぐらに曲がりくねった道を下るとすぐに下前漁港に着いた。
 たくさんのイカ釣り漁船が港に停泊していた。岸壁にも市場にも人の姿はまったくない。漁船のイカ釣り用の大きな電球のガラス玉 が強風に揺れ、旗がちぎれんばかりにパタパタと音を立てている。シケで漁は休みだ。たくさんの大小の漁船がシケの波に揺れている。強い風なのだが冷たくはない。
 いつもなら賑やかな漁港と市場なのだろうが誰もいないそして漁船が寄り添うようにしている港もまた良いものだ。イカの水揚げを見られない残念さはあまりない。
 港から権現岬へは上り坂の一本道が続いている。いっきに登りつめると駐車場があった。なるほどここは断崖が続く奇勝である。駐車場の隅には小泊までの遊歩道の入口があった。反対側の海に向っては「徐福上陸の岬」と書かれたヒバの丸太が建っている。今から2200前に中国、秦の始皇帝に仕えた方士徐福がたくさんの童男童女を連れてこの地に上陸したのだそうだ。しかしこの徐福上陸の地は他の日本各地にもある。
 そのヒバの丸太越しに日本海の鉛色の水平線が見える。たくさんの波しぶきが立っている。顔に当たる風が湿っぽい。岬への道を少し下がると眼下には海岸の黒い巨岩に大きな荒れ狂った波が襲いかかっている。その度に大きな音がする。顔に砕け散った波しぶきがかかる。しかし何故か不思議と気持ちが良い。間もなく北津軽の冬が来る。夏の穏やかな日本海も冬になるとこのように荒れ狂う姿が続く。これが津軽の、日本海の冬なのだ。
 中里町から15分程南へ行ったところに金木町がある。この町には文豪・太宰治の生家がある。今は「斜陽館」とよばれ一般 に開放されている。数年前までは民間により旅館として使われていたのだが現在は町により太宰治記念館として太宰治のゆかりの品々が展示されている。(有料500円)そういえば旅館としての最後の客だったことがあり旅館に働く人達と別 れを惜しんだことを思い出す。太宰治の小説「津軽」にはこの生家や津軽のことが詳しく書かれているので是非一読することをおすすめしたい。
 11月から翌年3月まで津軽の風物詩とも言える津軽鉄道「ストーブ列車」が走る。五所川原駅から津軽中里駅までの21キロ間を列車にダルマストーブを設置して運行するのだ。地吹雪きが舞う真っ白な北津軽平野を走るこの列車には多くのファンがいる。是非いつまでも残してもらいたいものだ。

本当の津軽が冬にある。
十三湖に沈む夕日が見事にきれいだ。荒れ狂う冬の日本海、太宰治が生まれた金木町の「斜陽館」。真っ白な冬の北津軽、そしてストーブ列車の線路が黒い線となってその白い平野を走る。地吹雪きの奥から津軽三味線が聞こえてくるようなそんな津軽平野の冬が間もなくやってくる。こんな季節だからこそ本当の津軽が見えるのかも知れない。一度足を運んで見たらいかがだろう



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